カナダの甘エビの状況

近年、グリーンランドのTACが拡大しているのに対し、カナダの TACは2015年から2016年、さらにまた2017年にも劇的に削減されました。TACの変動は両地域の生物学的アドバイスを反映したもので、持続可能な漁業管理を支えています。  カナダの主要漁獲域で見ると、漁獲海域SFA 6では、TACは2016年から2017年にかけて62％減少し、10,400トンに、SFA 5では、14,1％減の22,000tとなりました。エリア4は、Fisheries and Oceans Canadaによると、2016年の14,971トンから2017年の15,725トンに5％増加しました。

一方、グリーンランドの甘エビの漁獲枠は、グリーンランド自治政府が設定した2016年の85,000tから2017年は90,000tと僅かながら増加がみられます。 Greenland Institute of Natural Resourcesによると、生物学的には2018年は105,000トンまで増枠可能となっています。

カナダの甘エビ輸出量の顕著な下降

カナダでは、甘エビの漁業は昨年後半に始まりました。Undercurrent Newsによると、甘エビの漁業者の中には大きなサイズの甘エビを見つけるのが難しくなり、また漁獲量の制限で採算がとれなくなったため、漁に出ることに消極的になったものもいました。

カナダからの甘エビの供給不足は、今後しばらく世界の供給に大きな悪影響を及ぼし続けるでしょう。

カナダの甘エビの漁獲期に、これまで有数といわれた漁場からなぜ甘エビが消えたのか、なぜ移動したのか、という疑問が残っています。

カナダ水産海洋部のエビ生物学者であるキャサリンスカネスによると、セントローレンス湾の海水温の上昇が、北西大西洋北部の甘エビの生息数に対し大きく影響します。

彼女は、この変化は、気候変動および他の生物の生態の変化によって引き起こされうると推測しています。（たらや赤魚）

赤魚は、稚魚のときには甘エビとえさを取り合い、成魚になると甘エビを食べます。

CETA - 価格に影響なし

カナダとEUの間の包括的経済貿易協定（CETA）は2017年9月21日に暫定的に締結されました。専門家はこの協定でカナダが大きな勝利を得たと指摘しています。

一般に、カナダの甘エビは欧州の市場でより競争力があり、消費者はCETAの契約により安価な甘エビを入手できると考えられています。

ロイヤルグリーンランドの甘エビのカテゴリーマネージャー、ヘンリック・コーデンは、価格に関するこの見解に同意していません： 「欧州の消費者がCETAの締結によってスーパーで安く甘えびを購入できるとは思えない。カナダの漁獲枠は劇的に減っており、また枠があっても漁獲できないという事実もあります。

既に大型・超大型のシングル凍結した甘エビが不足しており、価格は既に高まっている。」と彼は言っています。

カナダは漁獲量の減少を経験したばかりでなく、大型甘エビの漁獲も頭打ちになっています。グリーンランド産大型甘エビの市場への供給も限られています。

他の漁場より大型の甘エビが生息する、グリーンランドのディスコ湾で、2016年後半に甘エビ漁業が始まりましたが、漁獲枠の大半を陸揚げした時点で、そのサイズは2015年に比べて、かなり小型でした。

カナダの漁獲量が減少するのと相まって、今後甘エビの供給が大幅に不足する可能性があるとヘンリック・コーデンは語っています。